2016年10月22日土曜日

ラプンツェルの消失(1)

 いかにして真田 律(さなだ りつ)が消えたのかが謎だった。

 幾原 織愛(いくはら おりえ)は主である少女の居なくなった部屋を眺めていた。予告されていた誘拐犯がいつの間にか侵入したらしい。
 どうやって?

 不可能だ。
 セキュリティの完備された48階建ての高層マンション。最上階とすぐ下の階が真田家の自宅になっている。織愛を含むメイドたちは武装して警戒していたはず。
 律は自宅から一歩も外に出ていない。最上階の律の部屋は窓が一切開かないようになっている。玄関ロビーの防犯カメラには律の姿も犯人らしき人物の姿も映っていなかった。

 誘拐犯はセキュリティをかいくぐって、予告通り律を連れ去り、跡形もなく見事に脱出してしまったのだ。あり得ないと思った。織愛は混乱している。

「居ない!?」
「有亜さん、部屋を調べてっ」
 ベレッタを携えた織愛は走る。
 あの箱入り娘・真田律がまともに家の外で生きていけるはずがない。無事に誘拐犯の手から助け出さなければ。焦燥感が募った。

 部屋に閉じこもっていたはずの律は、どうやって部屋の中から連れ出されたのだ?
 ドアの前には三人のメイドが見張っていた。
 窓は分厚く、嵌め殺しなので侵入も脱出も不可能。抜け穴になるような出口も他にない。まるで手品だ。
 まだ部屋の中にいる可能性もある。
 メイド仲間の奥野 有亜(おくの ありあ)を残して調べてもらっている。あの部屋に隠れられる場所などないと思うが念のためだ。

 47階に降りて玄関ロビーに出た。織愛は立ち止まって考えた。誘拐犯はここを通っていない。専用のカードがなければドア一つ開けられないはず。
 律の部屋から玄関まで不審な点はなかった。

「防犯カメラにもりっちゃん映ってないやっ」
 背後から背の低い少女が駆け寄ってきた。
 金髪で青い目のコルルレット・ヴィナスだ。律よりも幼いが技能は飛び抜けている。常に律のそばにいてガードしていたが、目を離したスキを狙われたようだ。

 それでも三人のメイドは誰かが常に律を監視しているはずだ。セキュリティもメイドたちの目も盗んで消失するなど物理的に難しい。

 何かを見落としている?
 認めたくはないが内通者が居るのではないか?
 
 織愛はもう一度 整理してみることにする。
to be continued