2016年8月20日土曜日

鏡のように

 私たち姉妹は似ていない。

 憎たらしいくらいだ。
 どちらかが橋の下で拾われてきたのではと思うほどに、性格も嗜好もまったく相容れないと思う。どうしてこんなにも違うのかずっと考えていた。

 妹の前をずっと走り続けてきた私だから、彼女のことは俯瞰で見ることができるのだ。

 私は沙智とは違う。
 第一に、私は親の言うことをよく聞くということ。お母さんのお使いには必ず私が行くことになっているのだ。それは暑い季節でも文句も言わずに遂行する。普段から身体を動かしていい運動にもなっているし、自分のことに直結するのだから断る理由もない。
 だが沙智はと言えば、自分の部屋でファッション雑誌を読んで、横になっているばかり。何の役に立たない。口だけ達者になってサボることばかり覚えて、将来が心配だ。

「ねむ…」
 現に沙智は居間のソファに転がって動かないままだ。雑誌を床に置いてうつ伏せになって見ている。日曜だからってお昼までだらだらとパジャマのまま寝転んでいるのだ。
 彼女はいくらお尻を叩いたって、動かないときはテコでも動かない。何をやらせても何も続かないというダメな性格だ。
 私はあんなにグータラではないし、凝り性だから何事も途中で止めたりしない。何ならハツカネズミのように走り続けることだってできる。私は姉として規範になり、何をやらせても続かない妹に道を示す必要があると思っている。

 鑑にならなければいけないのだ。

「…ふう…」
 私は彼女とは違うと思う…。
 顔立ちだけは似ているらしい。
 似ていると人によく言われるが、確かに沙智の顔を鏡で見ているような気持ちになるときもあった。

 部屋の隅を見つめて短く溜息を吐いた。
 自分もパジャマ姿であることに気づいて、早く私服に着替えようと思った。

 第二に、沙智は口が上手いということ。
 これによって親の言いつけを聞かなくても危機回避することができるようだ。
 そして欲しいものはだいたい親に買ってもらう。

 第三に、沙智は飽き性であるということ。
 苦心して買ってもらってもすぐに飽きてしまう。
 言い出しっぺの沙智が気づいたらどこかに行っている、なんてことはよくあることだ。嫌なことはすぐに人に押し付ける。始めは楽しくてもすぐに飽きてしまうのだ。
 朝のランニングだって、二人で始めても続けているのは私だけ。それもよくある話だった。

「どこいくの? あっちゃん」

 沙智の声に私はびくんっと足を止める。

「あっちゃんも止めたの? ダイエット。また三日坊主じゃん?」
 沙智はニヤリと私の背中に浴びせかけた。

「私は… ちょっと休んでるだけ。完全に諦めたさっちゃんには言われたくない…」

 沙智がお父さんにねだって買ってもらったランニングマシンは、今は部屋の隅に押しやられている。いつか再開しようと思っているのだから、私はやめたわけではない。

「ふーん。ちょっとねぇ?」
「そう。ちょっとよ」

 せっかく買ってもらったランニングマシンだ。
 私だけは続けるつもりである。
 今はタイミングを見計らっているだけ。

 だから私は沙智とは違うのだ。