2015年10月31日土曜日

日曜日のループトーク

 トーストとハムエッグのコンビネーション。
 手前には彼の好きな濃いめのブラックコーヒー。
「ディズニーシー」

 状況を理解する彼。
「急になんだよ」

「この前約束したじゃん」
「何を?」

「つれてってくれるって」
「言ったっけ?」
「言ったよ」

 彼は寝ぼけ眼(まなこ)で席に着く。
 寝ぐせがひどい。
 トーストはいつにも増して厚めだった。
 見れば彼女の前にはコーヒーカップだけがあった。
「君はコーヒーだけでいいの?」「あたしは朝は入らない人なの」
「まあ、君も食べなよ」
「人の話は聞いて。とりあえずそれ食べたら すぐ出かける準備してね」
「たまの休みだよ? 寝ることに専念したくないの?」
「したくないわ。時間がもったいない」
「だって日帰りでしょ? 楽しくないって。きっと」
「そんなことない」
「雨だって降りそうだし」
 彼はトーストを齧る。

 新聞がない。
「天気予報は曇りのち晴れだから」
「いつも当たらないって怒ってるのに」
「早く片付けて」
「だからって新聞隠さなくてもさ…」
「あんなのがあったら昼まであなた動かないじゃん」
「ねえ、もっとまとまった休みの日にしよう」
「まとまった休み取る気ないでしょ?」
「ん… そんなことないよ」
「約束したのに」

 テレビのリモコンを探す。
「行くの今日だって決めてないでしょ。今日は近場でいいじゃんよ」
「どこならつれてってくれる?」
「市内かな」
「何もないよ」
「んー」
「リモコンならゴミ箱の中よ」
「マジで?」

 コーヒーを啜(すす)ると段々と頭が覚醒してくる。
「朝はやっぱりコーヒーだな」
「名駅あたり? 栄にも行きたい」
「いつも行ってるようなところだね」
「市内なら他には水族館か動物園くらいしか思いつかないよ」
「じゃあ映画でも見に行く?」
「観たいものはやってないし」
「じゃ、公園を散歩しに行くとか」
「雨が降るんでしょ? 傘をさしながらじゃ嫌」
「曇りのち晴れだよ」
「それ早く食べてよ」

 ハムエッグは黄身が二つもある。
「こうしようか。行ったことのない本屋巡り」
「楽しいのはあなただけでしょう。立ち読みは趣味じゃない」
「高速道路をひた走るとか。サービスエリア巡り」
「そのまま東京に行こうよ。ディズニーシー」
「やっぱりそこらへんのコンビニ巡り。前からやりたがってた聞きプリンやろう」
「やりたがってるのはあなたでしょう」

 10時20分。
「あ、雨が降ってきたね」
「もういい」
「あ、ちょっと」
 彼の手からトーストが奪われる。

「それも返して」
「あ、コーヒーまで…?」

「もう作ってあげない」
 彼女はトーストに齧り付く。
「自分で食べるんだ」

「コンビニ行ったら?」
「わかった来週にしよう。約束する」

「先週もそう言ってた」
「そうだっけ?」
 雨脚は強まっていった。